NPC診断支援システムとは、ニーマンピック病C型(NPC)の疑いのある患者さんに対して、複数の専門医と施設が診断に必要な検査を体系的な計画のもと実施し、その結果をもとにNPCの可能性を検討し、主治医の先生の診断プロセスを支援するシステムです。なお、NPC診断支援システムの結果は、診断を行うものではありません。主治医の先生が最終的に診断を行うための参考資料であることをご承知おきください。

01. ニーマンピック病C型とは

ニーマンピック病 C 型(NPC)は、ライソゾーム病に属する先天代謝異常症で、NPC1
(Niemann-Pick disease Type C1) 又は NPC2 (Niemann-Pick disease Type C2) 遺伝子の変異によって生じる常染色体劣性遺伝性疾患です。これらの遺伝子変異により細胞内の脂質輸送に問題が生じ、スフィンゴミエリン、遊離コレステロールやガングリオシド(糖脂質)が中枢神経系や臓器のライソゾーム内に蓄積することで様々な臨床症状を呈します。臨床症状は、発症年齢に対応して特徴があります。

新生児期では、胆汁うっ滞を伴い、発症年齢が早いほど肝脾腫は著明です。神経症状は多彩で、早期発症では精神運動発達の遅れ、筋緊張低下、退行を示し、言葉の遅れ、小児失調、構音障害、タプレキシー(笑うと力が抜ける発作)、核上性垂直性眼球運動障害など特徴的な症状を示します。そして神経症状出現後は1~2年で歩行不能となり、嚥下困難が出現します。6~15歳ごろの発症例では、初期にはADHD(注意欠如多動性障害)と誤診されることも多いです。16歳以降の発症では、神経症状出現前に精神症状がみられることが多いです[参考文献1]。発症頻度は12万人に1人とされています[参考文献2]。

02. ニーマンピック病C型の診断

NPCの診断は、患者さんの臨床症状と複数の検査結果から総合的に判断する必要があります。NPCのスクリーニング検査として、異常胆汁酸測定、オキシステロール及びライソスフィンゴミエリン測定の有用性が報告されています。確定診断には、繊維芽細胞を用いたフィリピン検査、NPC1及びNPC2の遺伝子検査が行われています。しかしながら、①検査を行える施設が限定されている、②検査結果を得るまでに長い時間を要する、③NPCの臨床症状が多様で他の疾患との鑑別が難しいなどの理由から、専門医であっても診断に至るまでに苦慮することが多いのが現状です。

03. NPC診断支援システムとは

一般社団法人希少疾患の医療と研究を推進する会(クレアリッド)では、NPCの疑いのある患者さんに対して、複数の専門医と施設が診断に必要な検査を体系的な計画のもと実施し、その結果をもとにNPCの可能性を検討し、主治医の先生の診断プロセスを支援します。

★NPC診断支援システムは、各検査実施施設の倫理委員会の承認を得ています。

04. NPC診断支援システムの利用方法

NPCの疑いのある患者さんがいらっしゃいましたら、以下の手順で手続きをお願いいたします。
★NPC診断支援システムへの登録手続きは、必ず主治医の先生からお願いいたします。

① 登録の申し込み
主治医よりNPC診断支援システム相談窓口へご連絡ください。

【NPC診断支援システム相談窓口】
一般社団法人希少疾患の医療と研究を推進する会(クレアリッド)事務局
〒154-0024 東京都世田谷区三軒茶屋1丁目3番8号1階
E-mail:info@crearid.or.jp
TEL:03-6450-7905 FAX:03-6450-7906

★メールでのお問い合わせの際には、メールタイトル(件名)に“NPC診断支援システム登録について”とご記載ください。

お問い合わせはこちら

② 登録書類の受け取り
相談窓口より、登録書類 1 式を主治医へメールまたは郵送でお送りいたします。

【登録書類】
● NPC診断支援システムについてご案内
● 登録用紙
● サスピションインデックス(Suspicion Index)
● 説明同意書

③ 同意説明、同意取得
主治医より患者さんへ同意説明文書を用いてご説明ください。NPC診断支援システムにより実施される検査は、患者にとって診療上必要なものであり、本同意は診断を進める過程で複数の専門医が診療情報を共有することに対する同意であります。同意書原本は主治医の施設で適切に保管し、同意書控えは患者さんへお渡しください。

④ 登録用紙・サスピションインデックスの送付
【登録用紙】
主治医が登録用紙に必要事項を記入し、事務局へメール又は郵送してください。登録用紙には患者個人を特定できる情報は記入しません。また、各患者にはランダムで識別番号が付与され、患者さんの情報及び診断結果は、匿名化された状態でNPC診断支援システムに登録されます。主治医は、登録用紙に記入されている識別番号と患者の対応表等を作成し、施設で適切に保管してください。

【サスピションインデクス】
患者さんにみられるNPCと関連する症状・兆候について検証します。サスピションインデックスに患者さんにみられる症状を入力し、総計スコアを出してください。終了しましたら登録用紙と一緒にメール又は郵送してください。

⑤ 登録完了

⑥ 検査計画
NPCの専門医・研究者で構成された症例検討委員会で、患者さんの診断に必要な検査について検討し「検査計画書(検査項目、検体項目、検体量などを記したもの)」を作成します。

【症例検討委員会】
衞藤 義勝(神経疾患研究所付属先端医療研究センター)
奥山 虎之(埼玉医科大学ゲノム医療科 希少疾患ゲノム医療推進講座)
成田 綾 (鳥取大学医学部附属病院 脳神経小児科)
檜垣 克美(鳥取大学 生命機能研究支援センター 遺伝子探索分野)
前川 正充(東北大学病院 薬剤部)

⑦ 検査計画書の送付
相談窓口から主治医へ「検査計画書」をお送りします。

⑧ 検体送付
主治医は、「検査計画書」に従い、各検査実施施設へ検体の送付をお願いします。

⑨ 検査実施
各検査実施施設では、検体を受領してから速やかに検査を実施しますが、検査項目によっては結果が出るまで約2週間~3か月の期間を要します。

⑩ 検査結果
検査終了後、各検査の結果について順次検査実施施設から直接主治医の先生に郵送等でご連絡します。

⑪ 判定結果
全ての検査が終了しましたら、患者さんの臨床症状と各検査結果をもとに、症例検討委員会で総合的に検討し「結果報告書」を作成します。

⑫ 判定結果
相談窓口から主治医へ「結果報告書」をお送りします。

⑬ 結果説明
「結果報告書」をもとに主治医の先生から患者さんへ判定結果をご説明ください。なお、NPC診断支援システムの結果は、診断を行うものではありません。主治医の先生が最終的に診断を行うための参考資料であることをご承知おきください。

NPC診断支援システムについてご不明な点がございましたらクレアリッド事務局までご連絡ください。

参考文献:
1)遠藤文夫,山口清次,大浦敏博,奥山虎之,先天代謝異常ハンドブック,中山書店,2013
2)大野耕策, Niemann-Pick病C型-病態と診断・治療のポイント-, 脳と発達, 2016;48:81-8